グローバルブランドとnorthshore、そしてその先へ。 2016.8.8 | PROJECT

この春にジョイン後、northshoreの最強エンジンとしてガンガン起爆してくれている、エグゼクティブアカウントディレクター/クリエイティブ ストラテジストのユーキさん、こと小泉さん!ジョイン後、初めて携わったLACOSTEの案件で、チームビルド、突破できるクリエイティビティについて、彼の視点で語ってくれました。

この春にジョイン後、northshoreの最強エンジンとしてガンガン起爆してくれている、エグゼクティブアカウントディレクター/クリエイティブ ストラテジストのユーキさん、こと小泉さん!ジョイン後、初めて携わったLACOSTEの案件で、チームビルド、突破できるクリエイティビティについて、彼の視点で語ってくれました。

信じられないことに、「ラコステ」プロジェクトのブログ原稿を依頼されてから2ヶ月が経ってしまった。

遅筆にもほどがある遅さだ。

さらに、明確かつ明快に旬を過ぎているため、ストーリーに臨場感を醸し出すことも不可能になってしまった。

自業自得だ。



このプロジェクトは僕がノースショアの仲間と仕事をした最初の案件になった。

いや、正確にはそうではではないが、「がっつり肩を組んだ」、という意味では最初だ。



僕はかつてエージェンシーにいた。



欧米系の「クリエイティブ(もしくはブランド)エージェンシー」という

日本の広告マーケットではかなり特殊な空間で、長い時間を過ごしてきた。

もちろん、扱うクライアントもほとんどユニリーバやジョンソンエンドジョンソン、

マース、P&G、みたいな外資系だったため、世界を相手に仕事している感覚はあった。

とはいえ、ご存知の通り、日本では電通、博報堂がマーケットのメジャープレイヤーだし、カルチャーがまったく違う。



そして何よりも異なるのはプロトコル、というか、簡単に言うと仕事のプロセスやタームが全然違う。



オリエンとは呼ばず、ブリーフと呼ぶ、グルインじゃなくてフォーカスグループと呼ぶ、

CMプランナーが存在せず、ADとCWが制作における最小単位、CDはほとんど権威、

クライアントとは契約上はパートナー(ほとんど結婚に近いが。エージェンシーは尻にひかれる方だ)で

一業社一社としか付き合えない、とかそんな微妙な違いも積もれば大きな違いになる。



そういう僕なので、最初のクライアントがフランス系で直クライアントだったというのは

きっと、おあつらえ向きだったはずだ。



僕は、northshoreという事業体にとても魅力を感じている。

とにかく、若い。



代理店では僕よりも年齢が上の大先輩がまだ現役でワサワサいるが、ここでは僕は完全に長老だ。

スターウォーズだったら、ヨーダとかオビワンみたいなポジションだ。

ルークではない。(いや、エピソード7以降はルークのポジションかもしれないな。ってかどーでもよい)

広告業は、世間の新しいことに前向きでなくてはならないので、「若さ」はそれだけで「武器」になる。

もちろん「経験」も必要だが、「若さ」は頑張っても手に入らない貴重なスキルだ。



(もちろん、意識的や身体的に「若くいる」ことは可能だ。美魔女は単純にスゲーとか思っている。)

そして何よりも「エージェンシー」ではないということだ。

少なくとも既存の「エージェンシー」を目指してはいない。



通常「エージェンシー」は対クライアントのフロントラインに立つため、

ビジネスを進める中で、純粋なクリエイションにフォーカスすることが難しい。

これはドメでも外資でも同様だが、「クリエイティブ」が数あるサービスの一つ、

というポジションに置かれていることは純然たる事実だ。

国内大手代理店の場合は未だにメディアからのコミッションが大きな比重を占めるキャッシュメーカーだし、

外資の場合は「ブランドエージェンシー」としての契約フィーを得る。広告クリエイティブは一部でしかない。



クリエイティブの定義やアウトプットの場が多岐にわたる最近の風潮に合わせようと思っても、

自由に動くこともままならない。

(最近、大手エージェンシーが自社の傘下に少数精鋭なブティックを持つような傾向は、

クリエイティブに特化することが価値を生むことに気づいているからだ。)



これは僕の経験だが、2年間近くずっとブランドビルド(ブランドを再生するプロジェクト)に従事して、

左脳ばかりを使いまくって「制作物」を世に出すことがなかった時期すらある。

それでも億単位以上のフィーをもらっていたのだ。


プロダクション機能をもったブティック "northshore" らしさがワークした本プロジェクト

だが、northshoreのような実際にクラフト出来るプロダクション機能を持ったブティックは違う。

そこでの事業は純粋に「クリエイション」から利益を得ることなのだ。

これは、デジタルでも新しいテクノロジーでもスポット15秒なTVCMでも関係がない。

アウトプット、クリエイティビティこそがnorthshoreのビジネスエンジンなのだ。

とここまで、内部の人たちなら当たり前のことを書いてきてしまった。



そして「ラコステ」だ。


そういう、クラフトを得意としているクリエイター(northshoreで言うsurfer)にとっては、


1) オリエンから48時間で案出し

2) 撮影が7日後

3) キービジュアルの納品まで二週間という条件(後日に順延されたが)



という凄まじいスケジュールも、若さとアイデア、もの作りへの熱い思い、

で乗り切れるものに違いなかった。

しかし、大きな敵は「時間」の他に別のところにいたのだ。

それは「ブランドマネージメント」という魔物だった。


先に僕は2年をかけて「ブランドビルド」の仕事をしたと書いた。

そして、それだけで数億のフィーをゲットしていたと書いた。

それは「ブランドマネージメント」とイコールだ。



想像して欲しいのだが、それほどの時間と金をかけた「ブランドの誓約書」みたいなものは、

ある種、原理的な宗教の戒律のように「絶対視」される。

神との契約書なのだ。



僕らは、その原理主義者と戦わなくてはならなかった。

その多くは、戒律を知らずに途中参加した僕らのようなクリエイター集団にとっては理不尽なことだらけだ。







限られた時間の中でいかに突破したか。

僕らが時間がない中で、それでも競合プレに勝つような優れたアイデアを生み出せたのは、

「問題」だけに集中したからだ。

その「問題」とは、今回の「生涯補償ポロのプロモーション」という日本独自のキャンペーンを魅力的に、

明確に日本の消費者に伝えること、それだけだ。



ところが、物事はスムースにいかないように出来ている。

ブランドのルックやトンマナ、細かい規定、背景に使用する素材、果てはモデルの表情や出身地すら規定される。

ここに書けば誰も読みたくなくなるようなガラケーのカタログのような膨大なレギュレーションだ。

それもアイデア決定の後に押し寄せてきた。



せめて最初に教えてくれていれば、という思いも今回は通じない。

何しろ僕らに賭けて発注を決断した日本ローカルのクライアントも僕らと同じ条件だったからだ。

僕らは、クライアントとともに一つのチームと化して、本社のブランド管理者と戦った。

いや、本来は協業ということになるが、実際は戦いだった。




押し寄せる大波はまさにノースショアのビッグウェイブだった。

巻き込まれると、上下の感覚すら無くなるというアレだ。

何かを出せば、クリアに「Non」と言われる。

時間は過ぎていく。

撮影はすでに二回キャンセルした。

決定したモデルが、もしかしたらスケジュールが合わなくなるかもしれない。

そして、ワードローブが撮影当日まで決まらない、しかもカットをしないことが条件のモデルの髪を

どうしてもカットをしなくてはならないような事態にも陥った。

(ヘアメイクの方によるデビッド・カッパーフィールド並みのマジックによって切り抜けた)



そして、とうとうグローバルクライアントもローカルのクライアントも

満足のいくような「広告」を作り上げることができた。

こうして、僕にとって最初のノースショアの仲間たちとのコラボレーションは、

終わってみれば、クライアントとの一体感を生み出した。

クライアントとチーム全員が、朝方まで祝杯をあげるような関係値を作ることができたのだった。



ただ最後に一つだけ、明記しておきたい。



僕は、グローバルの担当者と「戦った」と書いた。

それは正しい。



クリエイティブとは生き物だ。

規定書を作り上げた瞬間から古びていくものなのだ。

だから、クリエイターはさまざまな条件と戦い続けるしかないのだ。

一方で、ブランドのあるべき論を、頑なまでに守るブランド管理者もまたクリエイターなのだ。

そこには英知が詰まっている。


その英知とは、そのブランドが今まで世界的なブランドでありえたか、その答えの全てが詰まっているのだ。

競合との熾烈な戦い、差別化、数々の失敗、そして過去の成功体験を捨てる勇気、そういうもの全てだ。

僕は、本社のブランド管理担当者の女性と出会うことがあったら、この時のエピソードを肴にシャンパンで祝杯をあげたいと思っている。



彼女への敬意を表してだ。

だから、今回の経験はノースショアにとっても大いなる財産になったはずだと僕は思う。


攻める広告アイデアと守るべきブランド資産、それを同時に、濃縮した期間で体験することが出来たのだから。


そして、僕らは、その先の新たな戦いの大海原に舵を進めていくのだ。





どんな大波が来てもきっと負けることはないだろう。

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